「相続なんて、お金持ちの話でしょ?」と思っていませんか。実は、家庭裁判所に持ち込まれる相続トラブルの約75%は遺産5,000万円以下の家庭で起きています。自宅と預貯金だけでも、分け方を巡って家族が揉めるケースは珍しくありません。

肝心なのは元気なうちに準備を始めること。相続の基本と、誰でも始められるエンディングノートの書き方を、順に見ていきます。

この記事でわかること
  • 相続の基本(誰が相続人になるか・基礎控除の計算・遺言書の種類)
  • エンディングノートに書くべき7つの項目と具体的な書き方
  • 「遺言書」と「エンディングノート」の違いと使い分け

誰が相続人になる?法定相続人と相続割合

亡くなった方(被相続人)の財産を受け取る権利がある人を「法定相続人」といいます。民法で決められた順位は次のとおりです。

  • 配偶者:常に相続人になります
  • 第1順位:子ども(子が亡くなっている場合は孫)
  • 第2順位:親(子どもがいない場合)
  • 第3順位:兄弟姉妹(子どもも親もいない場合)

法定相続分(財産の分け方の目安)は以下のとおりです。

  • 配偶者+子ども:配偶者1/2、子ども1/2(子どもが複数なら等分)
  • 配偶者+親:配偶者2/3、親1/3
  • 配偶者+兄弟姉妹:配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
💡 法定相続分はあくまで「目安」
法定相続分どおりに分ける義務はありません。相続人全員で話し合って合意すれば、自由な割合で分けることができます(この話し合いを「遺産分割協議」といいます)。ただし、合意できないとトラブルの原因になります。

相続税はかかる?基礎控除の計算方法

相続税は、遺産の総額が「基礎控除額」を超えた場合にだけかかります。超えなければ申告も納税も不要です。

🔢 基礎控除額の計算式
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の場合:

3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円

遺産が4,800万円以下なら、相続税はかかりません。

さらに、亡くなった方が住んでいた自宅の土地は、一定の条件を満たすと評価額を最大80%減らせる制度(「小規模宅地等の特例」)があります。このため、実際に相続税がかかる方は全体の約9%にとどまります。

📢 不安な場合は
「うちは相続税がかかるかも?」と思ったら、税理士への無料相談を利用しましょう。各地域の税理士会が定期的に無料相談会を開催しています。

遺言書の種類と作り方

遺言書は、自分の財産を「誰に・何を・どれだけ」渡すかを法的に有効な形で残す文書です。主に2つの種類があります。

  • 自筆証書遺言:自分で手書きする遺言書。費用がかからず手軽ですが、書き方に不備があると無効になることがあります。2020年からは法務局での保管制度もあります
  • 公正証書遺言:公証役場(法律上の証明書を作る公的な事務所)で、公証人(法律の専門家)に作成してもらう遺言書。費用はかかりますが(数万円〜)、確実に有効で、紛失の心配もありません
💡 まずは「自筆証書遺言+法務局保管」から
自筆証書遺言なら費用ゼロで作れます。2020年からは法務局での保管制度も始まり、紛失の心配もなくなりました。「自宅を配偶者に残したい」など内容が複雑な場合は、公正証書遺言(数万円〜)を弁護士・司法書士に相談するとより確実です。

エンディングノートとは?遺言書との違い

エンディングノートは、自分の希望や情報を家族に伝えるためのノートです。遺言書との最大の違いは「法的な効力がない」ことです。

  • 遺言書:財産の分け方について法的な効力がある。書き方にルールあり
  • エンディングノート:法的効力はないが、自由な形式で書ける。希望・情報・気持ちを幅広く伝えられる

どちらか一方ではなく、エンディングノートで想いを伝え、遺言書で法的な備えをする。この両輪が家族にとっては一番ありがたい形です。まずは気軽に始められるエンディングノートから取りかかりましょう。

エンディングノートに書く7つの項目

エンディングノートに決まった形式はありません。市販のノートを使っても、普通のノートに書いても大丈夫です。以下の7つの項目を参考にしてください。

① 自分の基本情報

氏名、生年月日、住所、本籍地、血液型、マイナンバーの保管場所など。意外と家族が知らないことが多い情報です。

② 医療・介護の希望

延命治療の希望の有無、かかりつけ医の情報、服用中の薬、アレルギー、介護が必要になったときの希望(自宅か施設か)など。

③ 財産に関する情報

銀行口座の一覧、保険の契約内容、不動産、有価証券(株式・投資信託など)、借入金・ローン。通帳や証書の保管場所も記載しましょう。

④ 葬儀・お墓の希望

葬儀の規模(家族葬・一般葬など)、宗教・宗派、お墓の場所、遺影に使ってほしい写真など。

⑤ 連絡先リスト

万が一のときに連絡してほしい親族・友人・知人のリスト。葬儀に呼んでほしい人、訃報を伝えてほしい人を分けて書いておくと家族が助かります。

⑥ デジタル情報

スマホのパスワード、メールアカウント、SNSアカウント、サブスクリプション(定期課金)の一覧など。詳しくは次のセクションで解説します。

⑦ 家族へのメッセージ

感謝の気持ちや伝えたいこと。形式にこだわらず、自分の言葉で書きましょう。家族にとって何よりの宝物になります。

💡 書き方のコツ
一度に全部書こうとせず、書けるところから少しずつ始めましょう。鉛筆で書けば、後から修正もできます。年に一度、内容を見直す習慣をつけると安心です。

デジタル終活も忘れずに

最近は「デジタル終活」も重要になっています。スマホやパソコンの中にしかない情報は、家族がアクセスできずに困るケースが増えています。

  • スマホのロック解除方法:パスコードや指紋認証の情報を信頼できる家族に伝えておく
  • サブスクの一覧:動画配信、音楽、新聞電子版など、月額課金サービスの契約を書き出す
  • ネット銀行・ネット証券:通帳がないため、ID・パスワードがわからないと手続きできません
  • SNSアカウント:FacebookやLINEなど、アカウントの処理方法を決めておく
⚠️ パスワードの保管について
パスワードをエンディングノートに直接書くことに抵抗がある方は、「パスワードは金庫の中の封筒に入れてある」のように保管場所だけを記載する方法もあります。

まとめ

相続の準備は「お金持ちのため」ではなく、家族に迷惑をかけないための思いやりです。

  • 法定相続人と基礎控除を知り、自分の状況を把握する
  • 財産の分け方に希望があれば遺言書を作る(まずは自筆+法務局保管が手軽)
  • エンディングノートで、法的な事項以外の希望や情報を幅広く伝える
  • デジタル情報の整理も忘れずに

まずはエンディングノートを1ページだけ書くことから始めてみませんか。

📌 ご注意
この記事は相続に関する一般的な情報を提供するものです。具体的な相続税の計算や遺言書の作成については、税理士・弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。