「年金だけで暮らしていけるのだろうか」――50代、60代になると誰もが一度は考える不安です。総務省の家計調査によると、65歳以上の夫婦世帯の平均的な年金収入は月約22万円。一方で生活費は月約25万円。毎月約3万円の赤字が出る計算です。

でも、今から固定費を見直し、使える制度を活用すれば、この差は十分に埋められます。私自身が実践している(または準備中の)節約術を11項目にまとめました。

この記事でわかること
  • 年間10万円以上削減できる固定費の見直し方法(格安SIM・保険・サブスク・電力)
  • ふるさと納税・医療費控除・シニア割引など「使わないと損」な制度の活用法
  • 不用品売却・ポイント活用・公共施設利用など、日常でできる節約の工夫

格安SIMに乗り換える

固定費の中で最も手軽に、かつ大きく削減できるのがスマホ代です。大手キャリア(ドコモ・au・ソフトバンク)から格安SIMに乗り換えるだけで、月5,000〜8,000円、年間で6〜10万円の節約になります。

「格安SIMって大丈夫なの?」と不安に思う方も多いですが、大手キャリアの回線をそのまま使っているので、通話品質やエリアは変わりません。違いは主に「店舗サポートが少ない」「混雑時に少し遅くなることがある」程度です。

  • 月3GB程度で十分な方:月1,000円前後のプランが多数あります
  • 電話をよくかける方:かけ放題オプション(月1,500円前後)を付けても大手の半額以下
  • 家族で乗り換え:家族割が使える格安SIMもあり、さらにお得です
💡 乗り換えの第一歩
まずは今の月額料金を確認しましょう。毎月の明細で「月7,000円以上」払っている方は、格安SIMで大幅に安くなる可能性が高いです。お子さんやお孫さんに相談すると、乗り換え手続きを手伝ってもらえることも多いです。

保険を見直す

子どもが独立した後も、現役時代と同じ保険に入り続けていませんか?ライフステージが変わったら、保険も見直すタイミングです。見直しだけで月1〜3万円の削減になるケースも珍しくありません。

死亡保険
子どもが独立し、住宅ローンも完済(または団信=団体信用生命保険で、万が一のときにローンが完済される保険で保障)していれば、高額な死亡保障は不要になります。葬儀費用(200〜300万円程度)をカバーできる最低限の保障に切り替えましょう。

医療保険
日本には「高額療養費制度」があり、70歳以上なら月の医療費の自己負担上限は約57,600円(一般的な所得の場合)です。貯蓄がある程度あれば、民間の医療保険は最小限で済みます。

がん保険
加入中のがん保険が古いタイプの場合、「入院給付金」中心の保障になっていることがあります。最近のがん治療は通院が主流なので、通院保障が手厚いプランか確認しましょう。

📌 見直しのポイント
保険の見直しは「解約」ではなく「適正化」です。必要な保障は残しつつ、過剰な部分を削ります。市区町村の消費生活センターでは、保険の相談を無料・中立な立場で受け付けています。「ほけんの窓口」などの代理店型相談窓口も無料で利用できますが、特定の保険商品を勧められることもある点は覚えておきましょう。

サブスクを棚卸しする

毎月自動で引き落とされるサブスクリプション(定額サービス)は、気づかないうちに増えていることがあります。一つひとつは少額でも、積み重なると月数千円になります。

  • 動画配信(Netflix、Amazon Prime、Hulu など):複数契約していませんか?
  • 音楽配信(Spotify、Apple Music など):無料プランで十分かもしれません
  • アプリの有料プラン:使っていないアプリの月額課金が残っていませんか?
  • 新聞の電子版:紙と電子の二重契約になっていませんか?

クレジットカードの明細を3か月分チェックして、「先月使わなかったサービス」は解約候補です。年間で1〜3万円の節約になることが多いです。

電力・ガス会社を乗り換える

2016年の電力自由化以降、電力会社を自由に選べるようになりました。比較サイトで現在の電気代と比較するだけで、年間1〜2万円安くなるケースがあります。

乗り換え手続きはWebで完結し、工事も不要です。電気の品質(停電のしやすさなど)は変わりません。送電線は同じものを使っているためです。

ガスも同様に自由化されています。電気とガスをセットにすると割引が受けられるプランも多いので、まとめて見直すのがおすすめです。

自動車の維持費を見直す

自動車の年間維持費は、軽自動車で約30万円、普通車で約50万円と言われています。税金、保険、車検、ガソリン代、駐車場代……すべて合わせると、実は家計の中でかなり大きな支出です。

本当に必要か考える
「週に1〜2回しか乗らない」なら、カーシェアやタクシーに切り替えた方が安くなる場合があります。月2万円のカーシェア利用なら、年間24万円。自家用車より大幅に安くなります。

車を手放せない場合
普通車から軽自動車への乗り換え、自動車保険の見直し(ネット型への変更で年間2〜3万円安くなることも)、不要なオプション保障の削除など、維持費を下げる方法はあります。

ふるさと納税で返礼品をもらう

ふるさと納税は、実質2,000円の自己負担で各地の特産品がもらえる制度です。まだ利用していない方は、今すぐ始めることをおすすめします。

仕組みはシンプルです。好きな自治体に寄付すると、寄付額から2,000円を引いた金額が翌年の住民税から控除されます。つまり、実質2,000円でお米、肉、魚介、果物、日用品などがもらえるということです。

  • おすすめの返礼品:お米(10kg〜20kg)、トイレットペーパー、ティッシュなど「必ず使うもの」を選ぶと食費・日用品費の節約に直結します
  • 控除上限額:年収や家族構成によって異なります。ふるさと納税サイトのシミュレーターで簡単に確認できます
  • ワンストップ特例:確定申告が不要になる制度です。寄付先が5自治体以内なら、申請書を送るだけで手続き完了です
💡 年金生活者もふるさと納税できる?
年金収入にも住民税がかかるため、年金生活者もふるさと納税を利用できます。ただし、控除上限額は現役時代より低くなるので、事前にシミュレーションで確認しましょう。年金収入200万円の場合、上限は約15,000〜20,000円程度が目安です。

医療費控除で税金を取り戻す

1年間に支払った医療費が10万円を超えた場合、確定申告で「医療費控除」を受けると、所得税と住民税が安くなります。年齢を重ねると医療費は増える傾向にあるので、活用しない手はありません。

対象になる主な費用

  • 病院・歯科の診察代、治療費
  • 処方薬の費用
  • 通院のための交通費(電車・バス代。タクシー代はやむを得ない場合のみ)
  • 入院時の食事代
  • 介護保険サービスの自己負担分(一部)
  • 市販薬(セルフメディケーション税制の対象品)

家族の医療費も合算できるので、配偶者や同居の親の分もまとめて申告しましょう。領収書は捨てずに1年分保管しておくことが大切です。

📌 セルフメディケーション税制
医療費が10万円に届かない場合でも、ドラッグストアで購入した対象の市販薬が年間12,000円を超えれば、セルフメディケーション税制で控除を受けられます。対象商品にはパッケージに「セルフメディケーション税控除対象」のマークが付いています。

シニア割引を賢く使う

50歳、55歳、60歳、65歳……年齢の節目ごとに使えるシニア割引は、意外なほどたくさんあります。知らないだけで損をしているかもしれません。

スーパー・ドラッグストア

  • イオン「G.G感謝デー」:55歳以上、毎月15日に5%OFF
  • イトーヨーカドー「シニアナナコデー」:60歳以上、毎月15日・25日に5%OFF

飲食店

  • デニーズ:60歳以上、ドリンクバー半額
  • すかいらーくグループ:60歳以上、5%割引(一部店舗)

交通機関

  • JR各社「ジパング倶楽部」:男性65歳以上・女性60歳以上、JR運賃が2〜3割引
  • 各自治体のシルバーパス:市バス・地下鉄が無料または格安に

映画館

  • TOHOシネマズ・イオンシネマなど:60歳以上1,200円(通常1,900円)

不用品を売却する

家の中に「もう使わないけど捨てるのはもったいない」というものはありませんか?メルカリやヤフオクを使えば、不用品がお金に変わります。断捨離と収入を同時に実現できる一石二鳥の方法です(整理術は「断捨離・終活整理の始め方」も参考にどうぞ)。

意外と売れるもの

  • ブランド品(バッグ、時計、アクセサリー)
  • 家電(使用期間が短いもの)
  • 本・CD・DVD(まとめ売りも可)
  • 趣味の道具(ゴルフクラブ、カメラ、釣り具など)
  • 贈答品・引き出物(未使用のタオル、食器など)

メルカリが苦手な方は、ブックオフやセカンドストリートなどの買取店に持ち込むのも手です。手間は減りますが、メルカリより買取額は下がります。

💡 メルカリ初心者の方へ
メルカリはスマホアプリで簡単に出品できます。写真を撮って、説明文を書いて、値段をつけるだけ。発送もコンビニから匿名配送ができるので、個人情報が相手に伝わる心配もありません。まずは家にある本や小物から試してみてください。

ポイント経済圏を統一する

楽天ポイント、Tポイント、dポイント、PayPayポイント……ポイントがバラバラに貯まっていませんか?「ポイント経済圏」を一つに絞ると、効率よくポイントが貯まり、実質的な節約になります。

経済圏を統一するとは?
例えば「楽天経済圏」なら、楽天カードで支払い、楽天市場で買い物、楽天モバイルでスマホ、楽天銀行で口座管理……と楽天のサービスに寄せることで、ポイントの還元率が上がります。年間で数万円分のポイントが貯まることも珍しくありません。

選び方のポイント

  • よく使うスーパーやドラッグストアで貯まるポイントに合わせる
  • スマホ決済(PayPay、楽天Pay など)と連携させる
  • クレジットカードもポイントが共通のものを選ぶ

図書館・公共施設を遠慮なく使う

図書館や公共施設は、税金で運営されている「すでにお金を払っているサービス」です。使わないのはもったいない。

図書館
本や雑誌が無料で読めるのはもちろん、最近はDVDの貸し出し、電子書籍の貸し出し、新聞・雑誌の閲覧コーナーなど、サービスが充実しています。月に本を2〜3冊読む方なら、年間2〜3万円の節約になります。予約はWebからできる図書館がほとんどです。

公共のスポーツ施設
市区町村の体育館やプールは、1回数百円で利用できます。民間のスポーツジム(月8,000〜12,000円)と比べると、圧倒的に安いです。シニア向けの体操教室や健康講座を無料で開催している自治体も多いです。

公民館・コミュニティセンター
趣味の講座(書道、絵画、音楽など)が格安で受けられます。同世代の仲間も見つかり、交際費の節約にもつながります。

年金の繰下げ受給を検討する

年金の受給開始を65歳より遅らせると、受給額が増えます。1か月遅らせるごとに0.7%増額され、70歳まで繰り下げると42%増、75歳まで繰り下げると84%増になります。

具体例
65歳時点で月15万円の年金を、70歳まで繰り下げると月21.3万円に。75歳まで繰り下げると月27.6万円になります。一度増えた年金額は一生変わりません。

繰下げに向いている人

  • 65歳以降も働く予定がある、または収入がある
  • 貯蓄に余裕があり、しばらく年金がなくても生活できる
  • 健康で長生きする自信がある

注意点
繰下げした分の元が取れるのは、おおよそ繰下げ期間の約12年後です。70歳まで繰下げなら82歳頃、75歳まで繰下げなら87歳頃。それより早く亡くなると、生涯受給総額は65歳受給より少なくなります。

📌 老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰下げ可能
老齢基礎年金だけ繰下げて、老齢厚生年金は65歳から受け取る、という組み合わせも可能です。全額を繰下げるのが不安な方は、一部だけ繰下げる選択肢も検討してみてください。

住まいの維持費を抑える

持ち家の方は、住まいの維持費も見直しポイントです。特に築20年を超えると、あちこちに修繕が必要になりますが、「大規模リフォーム」に飛びつく前に、本当に必要な修繕だけを見極めることが大切です。

リフォームより修繕を優先

  • 雨漏り、水漏れなど「放置すると悪化するもの」は早めに修繕
  • キッチンや浴室の「見た目のリフォーム」は本当に必要か再検討
  • 相見積もりを必ず取る(3社以上が理想)

住み替えも選択肢
子どもが独立して部屋が余っている場合、コンパクトな住まいへの住み替えも選択肢です。広い家は光熱費も掃除の手間もかかります。駅近のコンパクトなマンションに引っ越すと、車が不要になり、維持費が大幅に下がるケースもあります。

まとめ

年金暮らしに向けた節約術は、一気にすべてやる必要はありません。まずは「すぐできること」から始めましょう。

今日からできること

  • クレジットカードの明細を確認して、不要なサブスクを解約する
  • スマホの月額料金を確認する(7,000円以上なら格安SIMを検討)
  • ふるさと納税サイトで控除上限額をシミュレーションする

今月中にやりたいこと

  • 保険証券を引っ張り出して、保障内容を確認する
  • 家の中の不用品を1つだけメルカリに出品してみる
  • 近所の図書館に行ってみる

節約は「我慢」ではなく「ムダをなくすこと」です。浮いたお金で旅行に行ったり、趣味を楽しんだり。年金暮らしは、準備次第で十分に豊かな生活が送れます。

筆者より
私自身も60代で、年金生活に向けて一つずつ準備を進めています。この記事の内容は2026年3月時点の情報をもとに執筆しています。制度の詳細や最新の条件は、各公式サイトや窓口でご確認ください。